導入事例 #02 金融 / 証券

最適な株式の組み合わせをAIが提案する「AI株式ポートフォリオ診断」、保有する株式の取引タイミングを知らせる「AI株価見守りサービス」を開発・提供

OVERVIEW 概要

テーマ

「AI株式ポートフォリオ診断」
「AI株価見守りサービス」

お話を伺った方

SMBC日興証券株式会社

デジタルマーケティング部 デジタルアセット推進課長 安田 健司 様

課題
  • インターネット上には膨大な量の金融情報が氾濫しており、顧客ではどの情報が有益か選べない
  • オンライン取引経験をあまりしたことのない顧客が、より良い投資体験を得るためのツール導入が必要
  • 今後が期待されるAIを活用した、まったく新しいサービス開発に挑戦したい
解決
  • インターネット上の膨大な情報から、AIが顧客のリスク許容度を踏まえ、より効率的な運用が期待できる国内株式ポートフォリオを提案するサービス「AI株式ポートフォリオ診断」を開発
  • 顧客が保有している国内株式の株価をリアルタイムで見守り、投資戦略に基づいた売却タイミングを通知する「AI株価見守りサービス」を開発
  • 今後、国内株式だけでなく、外国株式、投資信託、債券など幅広く対象を広げることを検討

SMBCグループの証券会社として、強固な顧客基盤を持つSMBC日興証券株式会社様。株式のインターネット取引が急速に広がるなか、オンライントレードに慣れない顧客に向けて、インターネットの膨大な情報を凝縮し、投資に活かせる情報やツールの提供が急務となっていました。そこで金融業界に精通したHEROZとAIを活用した2つのサービスを共同開発。顧客だけでなくメディアや社内の注目も集め、導入後4年経った2023年2月末現在では延べ20万人近い利用者を数えるまでに成長しました。今回はプロジェクトを推進するデジタルマーケティング部の安田健司様にお話を伺いました。

インターネット上の膨大な情報をAIでわかりやすく集約

御社のAIサービス開発は、どのような課題から始まったのでしょうか?
安田様
当時、インターネット上で完結する株式取引が日本全体で増加していました。当社でも、オンライン取引をメインとした「ダイレクトコース」のお客様も多くいらっしゃいますが、お客様が対面営業のアドバイスなく、ご自分で情報を探して必要な情報を精査し、取引する方法になかなか慣れない方も多い印象でした。インターネット上の情報は膨大にあり、どの情報が有益なのかがわかりづらいものです。私自身も投資をする上で課題を感じていました。お客様も同様の課題がお持ちだと感じられたため、その解決を目指して新サービスを開発しました。
情報の取捨選択がサービス開発の目標ということでしょうか?
安田様
お客様にとって、膨大な情報をすべて把握することは難しい話です。そこで、AIを活用して膨大な情報を集約し、わかりやすく伝えたいと考えました。そのうえで我々の目標は、お客様がサービスを利用して得られる成果を基に、次の投資行動につなげていただくことでした。お客様により良い投資体験を得ていただきたいという思いが根底にあります。
他にない新たなサービスを開発するということで、社内を説得するのはご苦労されたのではないでしょうか?
安田様
当社では「お客さま本位の業務運営」の一環として、これまでも新しいサービスを提供してきました。AIではありませんが、たとえばファンドの銘柄を複数組み合わせてアドバイスするサービスなどです。その土壌があったため、企画段階でもあまり障壁はなく、逆に新しい取り組みということで注目され、応援してくれる方々が多かったです。PoC(実証実験)を早めに行い、想定以上の良い結果が出たこともあり、好意的な意見が多かったと思います。これはHEROZさんのおかげでもありますね。

HEROZは業界に精通しているので安心

HEROZに依頼するきっかけは何だったのでしょうか?
安田様
もともとの出会いは、SMBCグループのオープンイノベーション拠点である「hoops link tokyo(フープス・リンク・トーキョー)」で、当社のメンバーがHEROZの方と知り合ったことでした。HEROZさんはAI業界での実績が豊富であるうえに、金融業界における知識が深く、投資にも精通されていることが確信できたため、依頼を決めました。
では、競合他社はいなかったのですか?
安田様
「AIポートフォリオ診断」の開発に関しては、競合なくHEROZさんに決まりました。しかし「AI株価見守りサービス」については、実はHEROZさんに依頼する前に、別の企業様にAI開発を依頼していました。ところがPoCでAIの精度が上がらず、何度修正しても実用レベルに達せず困っていました。そこで、別サービスのPoCが好成績だったHEROZさんに依頼することになったという経緯があります。
他社とHEROZでは、どこが違いましたか?
安田様
AI自体の精度や品質もありますが、最大の違いは、HEROZさんが金融業界や投資に精通していたということです。ご担当いただいた方々には投資の経験があり、金融で扱うデータに精通しておられました。そのためAI開発に必要なデータを提供する際、HEROZさんの場合は説明が不要で、渡したデータを適切に処理してくれるという安心感がありました。
学習させるデータも膨大になりそうです。
安田様
基礎的なデータだけで、10種類程度でしょうか。しかしたとえば決算情報の項目だけでも100を超え、それが会社ごとにありますので、相当なデータ量だと思います。その中で、どのようなデータを使用して、どのようにアルゴリズムを構築するかというやりとりは、非常に複雑であるため、細かいことを一つ一つ説明し、理解していただくのは難しいことでした。この点に関して、HEROZさんが詳しかったことは、とても助かりました。逆に私たちが勉強になったこともあるほどでした。
サービス開発の過程で苦労されたのはどこでしょうか?
安田様
AIの結果を可視化することに最も苦労しました。AIの精度については、HEROZさんのおかげでそれほど苦労しませんでしたが、AIが出した結果を、お客様にどのようにわかりやすく伝えるかが、非常に難しいポイントでした。AIがなぜそのような結果を出したのかを説明することは非常に難しく、結果をそのまま出したらお客様に対して説明不足になり、その先の行動につながらない可能性がありました。そのため、HEROZさんからのアドバイスも受けながら、見た目を含め、わかりやすく表示する方法を検討し、導線などのUIデザインにもこだわりました。

「AIの提案で投資が楽しくなった」という声も

完成したサービスの内容を教えてください。
安田様
ひとつめは「AI株式ポートフォリオ診断」で、お客様が保有している国内株式の資産とリスク許容度、そしてHEROZさんのAIが予測した銘柄ごとの株価の将来の予測を掛け合わせ、より良いポートフォリオのリバランスなどを提案するサービスです。

もうひとつは「AI株価見守りサービス」で、HEROZさんのAIが国内株式の各銘柄ごと将来のトレンド予測をし、お客様が設定した銘柄の売却のタイミングを通知するサービスです。

当社のダイレクトコースのお客様であれば、どなたでも無料でご利用いただけます。
サービス開始後、反響はいかがでしたか?
安田様
他にない画期的なAIサービスということで、お客様からはご好評いただいています。「AIの提案を見て購入するようにしたら、投資が楽しくなった」という声をいただいたときは、本当にうれしかったですね。お客様が本当に使えるサービスを目指して、当社で保有いただいている銘柄は自動で連携するのでご自身で入力する必要がありませんし、他社で保有している銘柄の情報をご自身で入力することも可能にしたので、お客様の保有する国内株式全体のポートフォリオに対して、見守り、診断し、ご提案できます。
それは本当に便利です。
安田様
保有する株の価格が下がり、売却することのできない塩漬け銘柄は客観的に見れば、別の銘柄に変えた方が効果的な場合が多いと思います。しかしお客様ご自身ではなかなか踏ん切りがつかないものです。そこでAIから届いた売却時期や新しいポートフォリオの提案を見て決心がついた、買い換えしてよかった、という方がおられます。AIサービスが良い投資体験に繋がっている姿は開発者としても手応えがあります。
現在(2023年2月末)の利用者数はどのくらいですか?
安田様
「AI株式ポートフォリオ診断」の累計利用者は約12万人、「AI株価見守りサービス」は約7万5000人です。開発時は1年で1〜2万人程度の利用者を目標にと考えていましたが、すでに20万人近くにのぼり、私たちも驚くほどご利用いただいています。
以前、AIの予想結果を検証されたと聞きました。
安田様
はい、「AI株式ポートフォリオ診断」の提供開始から1年ほど経ったところで、HEROZさんと共同で、AIが購入をご提案した銘柄群と、売却をご提案した銘柄群の時価評価額の変動率を算出し、収益率を比較しました。結果、AIが購入提案した銘柄群が、売却提案の銘柄群の収益率を上回っています。同期間の日経平均株価の推移と比較しても好成績で、AIの優秀性を確認できました。
他にも効果がありましたか?
安田様
当社のブランディングにも効果がありました。当社がお客様向けの新しいAIサービスを提供したことが注目され、多くのメディアに取り上げていただきました。このHEROZさんとの取り組みは当社の採用情報のページで紹介していたこともあり、当社のアピールポイントのひとつとなりました。これは予想外の効果でした。
社内向けの影響はいかがですか?
安田様
当社のお客様向けAIサービスとしてメディアに取り上げていただいたこともあって、社内的にもAIに対する感覚が変わり、認知が高まったと感じています。

今後はAIが資産全体に対してアドバイスする形に

今後、サービスをどのように改善していく予定ですか?
安田様
現在は国内株式に限定したサービスですが、お客様が保有している投資商品はほかにも外国株式や債券、投資信託など多岐にわたります。実際、複数の商品を組み合わせて資産ポートフォリオを形成することが、最良の方法だと思います。将来的には、AIが複数の商品を組み合わせたお客様の資産ポートフォリオ全体を総合的に判断し、情報提供するサービスに発展させたいと考えています。
最後に、HEROZに対して今後期待することは何ですか?
安田様
インターネット上で完結する取引が増え、今後もデジタル接点と相性の良いAIの重要性は高まっていくと思います。AIは今後さらに進化して、人間を上回るようになると言われます。そうなると投資の世界でも大きな変化が起こるでしょう。その進化にしっかり追いついていけるよう、HEROZさんにはAIの進化を進めてほしいと考えています。そして当社もHEROZさんからのアイディアを受け取りながら、協力して新しいサービスを開発していきたいと考えています。
本日はありがとうございました。

HEROZは、世界最強クラスの将棋AIを構築し、AIコンペティションでの優勝なども多いエンジニア集団です。機械学習・深層学習(ディープラーニング)を活用したAI関連手法を独自のコア技術として、建設・金融・エンタメ業界など、各業界のDXの中核を担うAI開発を、構想策定から実装、運用まで一貫して支援いたします。将棋AIで培った勝ちへのこだわりで、PoC倒れせず、成果を出すことを追求し続けます。

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