導入事例 #03 エンターテインメント / ゲーム

カードゲームは人間対人間から、人間対AIへ
「最強のAI」を目指した「ゼノンザード」の挑戦

OVERVIEW 概要

テーマ

AI × デジタルカードバトルゲーム
「AIカードダス・ゼノンザード<ZENONZARD>」

お話を伺った方

株式会社バンダイ

カード事業部 猿舘 修 様

課題
  • 本格トレーディングカードゲームをそのままデジタルに置き換えると待ち時間に対して大きなストレスが発生してしまうため、デジタルな対戦相手に需要があった。
    しかし、定期的に大量のカードが追加される仕組み上、強い対戦相手のデジタル化が難しかった
解決
  • エンタメ業界での経験が豊富なHEROZを紹介されて依頼
  • ゲームに強く、カード更新時も強さを維持できるAIを開発
  • 人間対人間の駆け引き部分は割り切り、奥深さとストレスのないプレイ体験の実現に注力

世界的な人気を誇る日本のアニメーションで発生するIP(キャラクターの知的財産)をビジネス化することで知られるバンダイナムコグループの中で、玩具や模型、生活用品などの製造販売を行う株式会社バンダイ様。従来難しいと言われてきたトレーディングカードゲームのデジタルを実現した「AI CARDDASS(エーアイ・カードダス)」を立ち上げ、HEROZと共同開発で、カードゲーム特化型AIを搭載した「ZENONZARD(ゼノンザード)」をリリースしました。今回は開発プロジェクトを主導したカード事業部の猿舘修様にお話を伺いました。

デジタル化が難しかったカードゲームがHEROZのAIでスマホゲームに

今回の「ゼノンザード」は、業界でも珍しいデジタルでのカードゲームですが、一般的な紙のカードゲーム・ビジネスにはどんな課題があったのでしょうか?
猿舘様
長年、トレーディングカードゲームのビジネスに携わってきて、面白さも知っていますが、カードゲームはデジタル化には向いてないと言われてきました。カードゲームの特徴として、たとえば3ヶ月に1度、100種類といったように大量のカードが追加され、将棋で例えるなら駒の種類が大量に増えていくようなビジネスモデルが一般的なためです。
データ更新の負荷が大きそうです。
猿舘様
追加枚数も多いですし、カードによって個性があって、ゲーム自体が変化し続けて行きます。そのため、実際に人間と対戦できる強い対戦相手をデジタルで作り、維持し続けるのは非常に難しいと言われてきました。しかし、HEROZさんのAIの技術を知って、これなら従来のカードゲームとは違ったプレイをするデジタルゲームが開発できるかもしれないと、大きな可 能性を感じて、今回の取り組みが始まりました。
具体的には、従来のカードゲームとはどう違ったプレイを実現するために、どこにAIを使いたいと考えておられたのでしょうか?
猿舘様
それに関しては明確で、実際にトレーディングカードゲームをプレイする部分、つまり人間の対戦相手としてのAIを考えていました。フィジカルな紙のカードゲームでは、人間対人間の対戦を楽しみますが、ゼノンザードは人間対AIで対戦する新しいカードゲームのスタイルにチャレンジしました。HEROZさんにも最初から「最強のAIを作ってください」とお願いして います。
もともとHEROZを知ったのは、どのようなきっかけだったのでしょうか?
猿舘様
実はHEROZさんは当初、エンタメ領域ではなく、当社の別部門と業務効率化などの課題にAIを活用するという話をしていました。プログラムのデバッグや商品の需要予測をAIで行うといった案件だったと記憶しています。そんな時に私がHEROZさんを紹介され、「ゲームの対戦相手をAIで開発できますか?」と伺ったら、「一番得意です」という答えが返ってきて、すぐに依頼に至ったという経緯があります。
導入時には他社とHEROZを比較検討はしていないのですね。
猿舘様
はい。私たちの知っている範囲では、ゲームの回数を重ねていく中で自律的に強くなっていくAIや機械学習システムを開発する技術がある会社さんが他に見あたらなかったので、HEROZさん以外に比較検討先がなかったというのが正直なところです。
AI導入の際、社内から疑問の声が上がったという企業が多いですが、御社ではいかがでしたか?
猿舘様
当社は、わからないことはとりあえずやってみよう、という文化が強い会社です。今回もAIでカードゲームの次の可能性を広げることができるかもしれない、というプロジェクトですから、周囲も比較的好意的で、すんなり開発スタートできました。
開発が始まってからは、苦労した点はどこですか?
猿舘様
通常のAI開発は、現状の条件で精度の高いAIを開発して終了という案件が多いと思います。今回はそこに、定期的に大量の新しいキャラクターのカードが加わる前提で、最初に強いAIを作り、環境が変わっても強さを維持するというのが、非常に難しかったと思います。HEROZさんのアイデアと仕事の速度、マシンパワーでなんとかクリアできました。
これまでのフィジカルなカードゲーム開発と、今回のようなデジタルなカードゲーム開発では違いがありましたか?
猿舘様
今回は、これまでの人間対人間の対戦ではなく、人間対AIの対戦にフォーカスしたところが大きな違いです。人と人との対戦の面白さに慣れているユーザーが多い中で、人とAIが対戦することの面白さとは何だろうか、そこを追求するのが難しかったですね。
人とAIが対戦する面白さを、どう結論づけて開発されたのでしょうか?
猿舘様
人気のカードゲームは、自分が動いたアクションに対して相手のリアクションがあって、結構目まぐるしいやり取りを行っていくものが多いのですが、デジタルでそれをやってしまうと、顔が見えない状況で待ち時間が発生するタイミングが増えてしまい、プレイ体験の質を下げるだろうと考えました。なので今回は、人と人の「相手を倒してやろう」といった気持ちの部分は完全には補完できないと割り切って、駆け引きが奥深いカードゲームをストレスなくプレイできるというところに価値を見出して開発しました。

AIで新しいカードゲームの面白さを発掘

完成したAIカードゲーム「ゼノンザード」のアピールポイントをご紹介ください。
猿舘様
HEROZさんが開発した「カードゲーム対戦特化型AI」を搭載したスマートフォンアプリです。今までのカードゲームのようにパターン化された CPUや人との対戦だけではな く、プレイを通じての「AI育成」や「人間と AI の対戦」、「人間とAI の共闘」という新たな面白さを加えた新世代のデジタルカードゲームに仕上がりました。
どういう遊び方ができるのでしょうか?
猿舘様
AIとプレイヤーがバディを組んで戦う形がお勧めです。基本的なゲームのモードとしては、ランクマッチがメインになっていて、限られた期間の中で、世界一を目指して戦うという遊び方がメインになります。
ユーザーからの反響はいかがでしたか?
猿舘様
「ものすごくはまったカードゲームです」や、「今までで一番楽しかったカードゲームです」などと言ってくださる方も多かったですね。デジタルのカードゲームらしい楽しさという狙ったことがある程度できましたし、唯一無二の面白さという評価を得られたのかなという感触はあります。
AIが搭載されたことによる影響もあるでしょうか?
猿舘様
ゼノンザードはAI対人間だからこそ体感できる、カードゲームの新しい面白さを実現できましたので、AIの価値は大きかったと思います。これからAIをもっと活かすことができれば、カードゲームビジネスの中でAIがとても大きな意味を持つものになるのではないかと感じています。
ゲームの面白さ以外の部分でも、AIのメリットは感じられたでしょうか?
猿舘様
これまで制作してきたアナログのフィジカルなカードゲームは、新しいカードを作る際など、基本的には人と人でテストプレイを行って、強さなどを調整してきましたが、今回の開発では、AIを使ってテストプレイを行いました。AI同士で何百回と対戦した結果、個々のカードの勝率や使われる確率などを数値で評価することができ、人間が行うよりも効率的に開発できたと思います。AIによるテストプレイ以外でも、プレーヤーがAIと一緒に練習してレベルを上げていく機能を加えるなど、ソリューション的な役割でもAIの活躍余地は大きいと考えています。

ゲームのルールを自分で学んで強くなる汎用AIに期待

今後、HEROZにどんなことを期待されているでしょうか?
猿舘様
今回のAIは「ゼノンザード」というカードゲームのルールを理解してプレーができる、ゼノンザード専用のAIです。今後はそこから一段進んで、どんなカードゲームでも包括的にルールを自分で学習してプレーができる、汎用ゲームAIのようなものができると、応用の幅が大きく広がると思います。非常に難しいことだとは思うのですが、HEROZさんにはその部分で期 待しています。
HEROZ
そうですね、技術的には開発がもう始まっていると言えます。実際にゲームのルールを教えなくても、プレイすることで少しずつ新しいゲームを学んでいく汎用AIというのは、もう研究レベルでは登場しています。近い将来、カードゲームについても、ルールを教えなくても自律的に解釈してプレイできるAIは登場しそうです。と言いますか、ぜひ我々がチャレンジしていきたいと思います。
汎用AIを期待する目的はなんでしょうか?
猿舘様
そうですね、時間とコストが一番大きいですね。これからカードゲームのデジタル化が進んでいくと思うのですが、やはり歴史のあるカードゲームですと、何千何万というカードプールが存在しますので、それをすべて実装し、カードゲームごとに専用AIを制作するのは負担が大きいです。そこで、すべてをAIが自分で学習してくれれば、とてもありがたいというのが正直なところです。
最後に、今回の開発でHEROZに感じたことをお教えください。
猿舘様
HEROZさんは本当に素晴らしかったですね。特にメインのプログラムAIの開発を担当してくださったプログラマの方のスキルがものすごく高く、この人でなければこの速度 でこの正確性でこれほど強いカードゲームを組むことはできなかったんだろうなというのは、AIにそれほど詳しくない人間が外から見てもわかるレベルでした。そういう方がいらっしゃる会社なので、本気で何かAIソリューション作りたい、もしくはエンターテイメントの中で何かそれを生かしたいと考えたときに、それを解決できる方がいる可能性があると思いました。
ものすごく高いスキルとは、具体的にはどのようなスキルでしょうか?
猿舘様
単純に課題を解決するためにどういうコードを書いたらいいかということのクリティカルさと速度が普通ではなかったですね。
HEROZ
ありがとうございます。今回の案件では、カードゲームで大会に出場経験のあるメンバーや、将棋ゲームをはじめスマホゲームをやり込んでいるメンバーなど、ユーザーとしてもエンタメ業界に知見があるスタッフを集めました。そのため理解が早いという面もあるかと思います。それはエンタメ業界に限らず、金融や建設などHEROZが強い分野でも同じです。ぜひご 一緒にAIで課題解決できるよう、お気軽にご相談ください。

HEROZは、世界最強クラスの将棋AIを構築し、AIコンペティションでの優勝なども多いエンジニア集団です。機械学習・深層学習(ディープラーニング)を活用したAI関連手法を独 自のコア技術として、建設・金融・エンタメ業界など、各業界のDXの中核を担うAI開発を、構想策定から実装、運用まで一貫して支援いたします。将棋AIで培った勝ちへのこだわりで、PoC倒れせ ず、成果を出すことを追求し続けます。

無料資料請求&
お問い合わせはこちら

TOP